元請建設業者が負う義務と責任
元下関係について、元請業者は下請業者に対し優位になりやすい状況です。そのことを踏まえ、建設業法の目的条文では、工事の適正な施工、元下間の対等、公正かつ透明な取引が謳われており、元請責任が義務付けられております。
元請責任が義務付けられているからこそ、請負工事金額に関わりなく許可業者を下請けに入れる傾向が、最近では強くなってきています。
軽微な工事しか請負わないから許可はいらない、という状況ではなくなってきております。
元請業者の義務には、どんなものがあるのか
見積条件提示義務
元下間で契約をする前に、詳しい工事内容を下請け業者に提示して、下請に必要な一定の考える期間を設けることが、義務付けられております。即断即決を迫ってはいけません。
書面による契約締結義務
建設業法18条には、何と書いてあるか
建設業界は、契約の締結はあまりしていないという、口約束で工事を請け負っていらっしゃる事業者様も一部には、おられるようですが、厳密にいうと建設業法違反です。
注文書や請書による契約は、契約書と同等の要件を満たす必要があります。
不当に低い請負代金の禁止
優位な立場を悪用して、建設工事を施工するために通常必要であると認められる原価を割るような請負代金で、強引に取引をしようとしてはいけません。建設業法19条の3で謳われています。
指値発注時の注意点
元請業者が一方的に勝手に決めた工事請負代金の金額を下請けに提示して、その金額で下請業者に契約を迫ってはいけません。そういう場合は、積算根拠をはっきりさせて、下請業者と十分な協議が必要です。
不当な使用資材等の購入強制の禁止
下請契約を締結後に資材や機械などの購入先を指定して下請け業者の利益を害することは禁止。資材などの指定をする場合は、契約締結前までに、あらかじめ見積もりを出しておく必要があります。
一方的なやり直し工事の禁止
下請業者に責任がないにもかかわらず、やり直し工事を下請けにさせる場合は、契約の変更が必要で、その費用は原則元請業者が負担します。ただし、下請業者の責めに帰すべき場合は、この限りではありません。
工期を変更する際の注意点
事情により、工期の変更をせざるを得ない状況になった場合は、当初の契約と同じように、元下間で契約を書面でかわす必要があります。
工期の変更に伴う費用の増額分を、下請業者に一方的に払わせてはなりません。下請業者のミスがない場合は、原則、元請業者が費用を負担します。
赤伝処理の注意点
下請工事代金の支払いのときに、諸費用や施工時に出た建設廃棄物の処理費用などを、相殺(差し引きをして帳消しにする)してはいけません。
赤伝処理をするには、あらかじめ元下間での協議や合意が必要であり、その内容を契約書面に書いて、下請業者が不利にならないよう配慮が必要です。